不登校

1. 増え続ける不登校―子どもたちは、なぜ学校に行けなくなるのか

 近年、不登校の児童生徒が大きく増加しています。
 文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2024年度の不登校児童生徒数は、小学校137,704人、中学校216,266人でした。小・中学校だけでも約35万4千人となり、過去最多となっています。いまや不登校は、一部の子どもだけに起こる特別な問題ではありません。

2. 不登校は10年間で大きく増加 ― 特に小学生は「5倍以上」に

 文部科学省の調査を見ると、不登校の子どもたちは、この10年間で大きく増加しています。

 2014年度から2024年度までの10年間で比較すると、その変化の大きさがはっきりと見えてきます。

  • 小学校 25,864人 → 137,704人 約5.3倍
  • 中学校 97,033人 → 216,266人 約2.2倍
  • 高校 53,156人 → 67,782人 約1.3倍
  • 小・中・高の合計 176,053人 → 421,752人 約2.4倍

 なかでも、最も大きな変化を示しているのが小学生の不登校です。
2014年度には約2万6千人だった小学生の不登校は、2024年度には13万7,704人。わずか10年間で約5.3倍になりました。

3. 近似式からも分かる「不登校、増加の勢い」

 グラフの点線は、2014~2024年度の変化を直線で近似したものです。
 近似式の x は年度の順番、y は不登校児童生徒数を表します。
 ここで特に注目したいのが、xの前の数字(傾き)です。この数字が大きいほど、この10年間に不登校児童生徒数が大きく増加してきたことを意味します。

グラフでは、

  • 小学校:y=11,871x-4,392.4  →  1年進むごとに、平均すると約11,900人増加
  • 中学校:y=13,282x+63,744   →  1年あたり約13,300人増加
  • 高校:y=1,627.3x+44,319   →  1年あたり約1,600人増加
  • 小・中・高校合計:y=26,780x+103,671 → 1年あたり約26,800人増加

という傾向が示されています。

 実際、小学生の不登校は2014年度の25,864人から、2024年度には137,704人となり、約5.3倍になっています。
 つまり、この10年間を一本の直線で捉えると、小・中・高校を合わせた不登校児童生徒数は、平均して毎年約2万7千人ずつ増加してきたことになります。

4. このまま増加が続くと、2040年には約83万人?

 2014~2024年度の増加傾向をもとに線形近似式で単純試算すると、不登校児童生徒数は、2030年に約55.9万人、2040年には約82.7万人となります。
 特に小学校では、2024年度の約13.8万人から、2040年には約31.6万人という試算になります。
 ただし、これは将来を予測したものではありません。過去10年間と同じ増加傾向が続いた場合の単純試算です。

 この数字が問いかけているのは、「この増加傾向をこのままにしてよいのか」ということです。不登校になってからの支援だけでなく、早期支援と予防的な取組がますます重要になっています。

5. 中学生の不登校は「約15人に1人」

 中学校の不登校出現率は、2012年度の2.56%を底に、その後上昇を続けています。
 2024年度の6.79%は、単純に換算すると中学生約15人に1人が不登校という割合です。
 また、2014年度の2.76%と比較すると、10年間で約2.5倍になっています。

 このグラフから重要なのは、不登校が一部の子どもだけの問題ではなく、どの学級でも起こり得る身近な教育課題になっているということです。

 そのため、不登校になってからの支援だけでなく、すべての子どもを対象とした居場所づくり、人間関係づくり、早期発見・予防的支援が重要になっています。

6. 2016年「教育機会確保法」成立後、不登校数は急増

 「教育機会確保法」が成立し、不登校支援の考え方は大きく転換しました。「不登校というだけで問題行動とみなさない」「学校復帰だけを目標としない」「休養の必要性を認める」という考え方が明確にされ、学校外での多様な学びも重視されるようになりました。

 しかし、2016年以降も不登校は2013年度以降増加を続けています。教育機会確保法との因果関係を単純に結びつけることはできませんが、「学校復帰」だけを目標としない支援が影響している可能性を検討する必要が急務です。

7. 「無理に登校させない」=「何もしなくてよい」ではない

 学校現場で「無理に登校させてはいけない」「本人が動き出すまで待つ」という理解が強くなり、結果として早期の働きかけや支援が遅れてはいないか、検証する必要があります。

 私も多くの学校と連携をしていますが、不登校児童生徒への早期の家庭訪問などが、できていない現状を聞いています。文部科学省の方針も、本来は「見守るだけ」ではありません。不登校の予兆を捉え、初期段階から組織的・計画的に支援することを求めています。

8. 中学1年生で不登校が急増 ―「中1ギャップ」

 2024年度の不登校児童生徒数を学年別にみると、学年が上がるにつれて増加し、特に小学6年生38,080人から中学1年生58,736人へと大きく増加しています。

 わずか1年間で20,656人増、約1.5倍となっており、いわゆる「中1ギャップ」が明確に表れています。この結果から、小学校から中学校への移行期を重点的に支援し、中学校入学前から人間関係づくりや相談体制を整えることが、不登校の予防に重要だと考えられます。

9. 教師から見る不登校の要因は、「やる気がない」 本当???

 文部科学省の2024年度調査では、教員が把握した不登校の要因として、「学校生活に対してやる気が出ない」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」といった本人要因が、小・中・高校のすべてで上位3位を占めています。この調査は、教員がみた不登校の要因です。

 しかし、「やる気が出ない」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」は、本当に不登校の「原因」なのでしょうか。学校での困難などによって生じた「結果」である可能性も考える必要があります。

10. 児童生徒本人から見ると「学校要因」が多い

 2020年の文部科学省調査では、前年度に不登校だった児童生徒本人に「学校に行きづらくなったきっかけ」を尋ねています。その結果、「教師との関係」「いじめ」「友人関係」「学業不振」など、学校に関係する要因が多く挙げられました。

 また、「身体の不調」「生活リズムの乱れ」も多くみられますが、これらは原因だけでなく、学校での困難やストレスによって生じた結果である可能性もあります。不登校を理解するには、教師から見える姿だけでなく、子ども本人の声を丁寧に聞くことが重要です。

 上記2つの表を見て、「教師から見る不登校」と「子どもから見る不登校」には大きな違いがあることを認識する必要があります。

11. 不登校支援は、子どもの声を聴くこと

 子どもが学校に来なくなってからではなく、

 「休み始める前に何ができるのか」
 「小さなSOSをどう見つけるのか」
 「安心して助けを求められる学校をどうつくるのか」
を考えることです。

 そして、子どもの声を丁寧に聴きながら、一人ひとりに合った学び方や居場所を一緒に考えていく。

 不登校の予防と支援の出発点は、子どもの声を聴くことです。

12. ピアサポート研究会ができる不登校支援

 不登校支援で大切なのは、子どもが安心できる人や場所とつながり、自信を取り戻していくことです。ピアサポート研究会では、大学生ピアサポーターとの継続的な関わりを中心に、居場所づくり、学習支援、遊び・スポーツ・体験活動、保護者支援などを行うことができます。

 特に、教師や保護者とは異なる「少し年上のお兄さん・お姉さん」である大学生との関係は大きな特徴です。食事をする、遊ぶ、勉強する、話をするといった日常的な活動を通して、無理なく人とのつながりを取り戻していきます。

 「学校に行けるようにする」から、「その子が次の一歩を踏み出せるようにする」へ。

 これが、ピアサポート研究会が目指す不登校支援です。

主な参考資料

・文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
・文部科学省「令和2年度 不登校児童生徒の実態調査」
・文部科学省「「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」等。