ネット依存

私たちは、ネットに依存し過ぎていませんか?

電車や地下鉄では、大人も子どもも、多くの人がスマートフォンを見ています。ファミリーレストランでも、友達同士や家族、恋人同士が、それぞれゲームやSNSをして、ほとんど会話をしていない光景を目にします。

実は、私自身も「ネットに依存しているのではないか」と思うことがあります。YouTubeを見始めると、関連動画が次々と表示され、気がつけば2~3時間が経っていることもあります。

子どもたちの遊び方も変わってきました。ある日、公園に小学生の男子5人が集まってきました。「サッカーでもするのかな」と思って見ていると、全員がゲーム機を取り出し、ほとんど会話をせず、それぞれゲームを始めました。ネット依存は、子どもだけの問題ではありません。私たち大人にとっても身近な問題です。

ここでは、国などが実施した調査データをもとに、子どもたちのネット利用とネット依存の現状について考えていきます。

1. 子どものインターネット利用、1歳で42.9%(2024年)

 子どものインターネット利用は、急速に低年齢化しています。2024年には、1歳で42.9%、3歳で72.6%、5歳では80.5%がインターネットを利用しています。インターネットは小学生になってから使い始めるものではなく、乳幼児期から子どもの生活の中に入り込んでいることがわかります。

 ここでいうインターネット利用には、スマートフォンだけでなく、タブレット、パソコン、ゲーム機、インターネットに接続されたテレビなどによる利用も含まれます。そのため、インターネットを使い始めてから教えるのではなく、使い始める幼児期から、発達段階に応じた情報モラル教育を始めることが重要です。

 次に、小学生・中学生・高校生のネット利用状況を見てみましょう。

インターネット利用率(子供の年齢別) 低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査: (内閣府・こども家庭庁,2017,2020,2024)

インターネット利用率(子供の年齢別) 低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査: (内閣府・こども家庭庁,2017,2020,2024)

Column chart. (内閣府・こども家庭庁,2017,2020,2024). Source: 出典:内閣府・こども家庭庁『青少年のインターネット利用環境実態調査』等をもとに作成」. Data table with 4 rows and 11 columns follows.

インターネット利用率(子供の年齢別) 低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査
0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 6歳 7歳 8歳 9歳
2017 3.1 9.1 28.2 35.8 39.7 36.8 45 49.7 49.5 65.8
2020 7.1 17.2 43.8 60.2 58.7 66 71.2 76.6 85.7 87.2
2024 10.1 42.9 56.4 78.6 77.1 80.5 83.5 87.9 92.1 95.2

Source: 出典:内閣府・こども家庭庁『青少年のインターネット利用環境実態調査』等をもとに作成」

2. 増加する中高生のネット依存

 厚生労働省の全国調査では、ネット依存が疑われる中高生は、2012年の約52万人から、2018年には約93万人へと大きく増加しました。
 これは、当時の中高生の約7人に1人にあたります。
 しかも、この調査は新型コロナウイルス感染症の流行前に行われたものです。その後、コロナ禍による外出制限やオンライン化などを背景に、子どもたちがインターネットやゲームに接する時間は増加しました。兵庫県では、児童生徒のインターネット利用に関する大規模な調査実施しています。この調査の分析には、私も参加していいます。

① 調査対象
 ・青少年:18,081名
 (小学1〜3年生4,712名、小学4〜6年生5,446名、中学生5,711名、高校生2,212名)
 ・保護者:4,083名

② 調査内容
 ・ケータイ・スマホアンケート
 ・ネット夢中度調査
  アメリカのキンバリー・ヤング博士が開発した8項目の【Diagnostic Questionnaire for Internet Addiction (DQ), Young K,(1998)】を使用。本アンケートは、厚生労働省でも使用。

ネット依存傾向にある子供の割合

ネット依存傾向にある子供の割合

Column chart. Data table with 5 rows and 4 columns follows.

ネット依存傾向にある子供の割合
小4~6 中学生 高校生
R4 8.7 13 24.5
R5 15.3 23 29.6
R6 16 23.5 28.7
R7 17.5 26.4 34.1

 2025年(令和7年)に実施された県内青少年18,081人を対象とした調査では、ネット依存傾向にある子どもの割合は、小学4~6年生17.5%、中学生26.4%、高校生34.1%でした。特に高校生では、約3人に1人がネット依存傾向にあります。また、2022年(令和4年)と比べると、小学4~6年生は8.7%→17.5%、中学生は**13.0%→26.4%と、いずれも約2倍になっています。高校生も24.5%→34.1%へ増加しています。

(1)夜更かしと、ネット依存傾向には強い関係

就寝時刻(全体)

就寝時刻(全体)

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

就寝時刻(全体)
~10時頃 11時頃 12時頃 1時頃~
小4~6 76.3 17.2 4.3 2.3
中学生 34.8 39.9 19.6 5.7
高校生 9.8 28.9 47.8 13.5

就寝時刻とネット依存傾向の割合

就寝時刻とネット依存傾向の割合

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

就寝時刻とネット依存傾向の割合
~10時頃 11時頃 12時頃 1時頃~
小4~6 14.3 24.4 30.2 41.8
中学生 19.4 26.2 34 41
高校生 21.2 28.2 36.3 46.6

 10時頃までに寝る子どものネット依存傾向は、小学4~6年生14.3%、中学生19.4%、高校生21.2%でした。
 一方、1時頃以降に寝る子どもでは、小学4~6年生41.8%、中学生41.0%、高校生46.6%にまで高くなっています。
 どの学校段階でも、就寝時刻が遅い子どもほどネット依存傾向の割合が高いという明確な関連がみられます。
 子どものネット問題を考えるときには、利用時間だけを見るのではなく、「何時に寝ているか」「十分な睡眠がとれているか」という生活習慣にも目を向けることが大切です。

(2)朝食の習慣とネット依存傾向

朝食の習慣(全体)

朝食の習慣(全体)

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

朝食の習慣(全体)
毎回食べない あまり食べない だいたい食べる 必ず食べる
小4~6 1.9 6.1 16.3 75.6
中学生 2.7 6 16.4 74.8
高校生 4.9 8 20 67.2

朝食の習慣とネット依存傾向の割合

朝食の習慣とネット依存傾向の割合

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

朝食の習慣とネット依存傾向の割合
毎回食べない あまり食べない だいたい食べる 必ず食べる
小4~6 26.7 31.1 22.1 14.9
中学生 25.8 30.5 31.1 24.8
高校生 37 30.1 35.5 33.6

 朝食を「必ず食べる」割合は、小学4~6年生75.6%、中学生74.8%、高校生67.2%でした。
 一方、朝食を毎日食べない子どもほど、ネット依存傾向が高い傾向がみられます。この結果は、単に「朝食を食べるかどうか」だけの問題ではなく、睡眠、生活リズム、親子のコミュニケーションなど、家庭での生活全体がネット利用と関係している可能性を示しています。
 ネット依存を予防するためには、子どものネット利用を注意するだけでなく、「きちんと眠れている?」「朝ごはん食べた?」と、日常生活の中で子どもに関心を向けることも大切です。

(3)勉強への自信とネット依存傾向

勉強への自信(全体)

勉強への自信(全体)

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

勉強への自信(全体)
全くない あまりない 少しある とてもある
小4~6 9.6 26.8 47.7 15.9
中学生 19.5 45.1 30.3 5.1
高校生 22.4 51.6 22.2 3.8

勉強への自信とネット依存傾向の割合

勉強への自信とネット依存傾向の割合

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

勉強への自信とネット依存傾向の割合
全くない あまりない 少しある とてもある
小4~6 30.8 21.3 14.4 11.2
中学生 31.8 26.4 23.3 21.2
高校生 40.5 33.5 30.8 17.9

 学年が上がるにつれて、「勉強に自信がある」と答える子どもの割合は低くなっています。
 また、勉強への自信が低い子どもほど、ネット依存傾向が高い傾向がみられます。特に高校生では、勉強への自信が「全くない」子どもの40.5%がネット依存傾向にありました。
 ネット依存を考える際には、利用時間だけでなく、学習への自信や学校生活など、子どもの心理的な側面にも目を向けることが大切です。

(4)友達関係とネット依存傾向

友達への満足度(全体)

友達への満足度(全体)

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

友達への満足度(全体)
全く満足していない あまり満足していない 少し満足している とても満足している
小4~6 1.6 6.3 26.8 65.2
中学生 1.8 7.9 36.6 53.7
高校生 2 8.3 38.6 51.1

友達への満足度とネット依存傾向の割合

友達への満足度とネット依存傾向の割合

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

友達への満足度とネット依存傾向の割合
全く満足していない あまり満足していない 少し満足している とても満足している
小4~6 28.1 28 21.8 14.2
中学生 41.3 41.3 30.3 20.8
高校生 38.6 49.7 39.4 26.9

 友達への満足度が高い子どもほど、ネット依存傾向が低いことがわかります。例えば、「友達にとても満足している」子どものネット依存傾向は、小学4~6年生14.2%、中学生20.8%、高校生26.9%でした。
 一方、友達への満足度が低い子どもでは、ネット依存傾向が高くなる傾向がみられます。この結果から、ネット依存の問題は、ネットの利用時間だけではなく、子どもの人間関係や孤立感とも関連している可能性があります。
 子どもたちにとって、ネットだけではなく、リアルな生活の中で安心して人とつながれる友達や居場所をつくることも大切です。

(5)家庭の安心感とネット依存傾向

家族への安心度(全体)

家族への安心度(全体)

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

家族への安心度(全体)
全く安心していない あまり安心していない 少し安心している とても安心している
小4~6 1 4.3 18.8 75.9
中学生 1.6 5.4 23.9 69.1
高校生 1.6 5.7 24.2 68.6

家族への安心度とネット依存傾向の割合

家族への安心度とネット依存傾向の割合

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

家族への安心度とネット依存傾向の割合
全く安心していない あまり安心していない 少し安心している とても安心している
小4~6 47.3 30.3 24.8 14.4
中学生 40.9 41.6 33.4 22.2
高校生 40 52 41.2 29.6

家庭での安心感が低い子どもほど、ネット依存傾向が高いことがわかります。
 例えば、「家庭でとても安心している」子どものネット依存傾向は、小学4~6年生14.4%、中学生22.2%、高校生29.6%でした。
 一方、「全く安心していない」子どもでは、それぞれ47.3%、40.9%、40.0%と高くなっています。

 この結果は、ネット依存を考えるうえで、利用時間を制限するだけでなく、子どもが家庭を安心できる居場所と感じられているかにも目を向ける必要があることを示しています。
 子どもが安心して話せる、相談できる、受け止めてもらえる家庭環境をつくることも、ネット依存を予防する大切な視点です。

(6)学校の安心感とネット依存傾向

学校への安心度(全体)

学校への安心度(全体)

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

学校への安心度(全体)
全く安心していない あまり安心していない 少し安心している とても安心している
小4~6 2.3 7.1 32.4 58.2
中学生 2.6 8.8 39.7 48.9
高校生 2.8 10.5 . 46.4

学校への安心度とネット依存傾向の割合

学校への安心度とネット依存傾向の割合

Column chart. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

学校への安心度とネット依存傾向の割合
全く安心していない あまり安心していない 少し安心している とても安心している
小4~6 36.2 30.5 20.9 13
中学生 38.8 41 30.3 19.6
高校生 37.1 47.8 38.4 26.6

 学校での安心感が低い子どもほど、ネット依存傾向が高いことがわかります。「学校でとても安心している」子どものネット依存傾向は、小学4~6年生13.0%、中学生19.6%、高校生26.6%でした。
 一方、「全く安心していない」子どもでは、36.2%、38.8%、37.1%と高くなっています。この結果から、ネット依存の問題を考える際には、利用時間だけでなく、子どもが学校に安心できる居場所や人間関係をもっているかにも目を向けることが大切です。
 家庭と学校の両方に、安心して過ごせる「リアルな居場所」をつくることが、ネットへの過度な依存を防ぐ重要な視点です。

(7)会ったことのない人とのネット上の交流

会ったことのない人とネットでやりとりした経験: 子どもの回答

会ったことのない人とネットでやりとりした経験: 子どもの回答

Column chart. 子どもの回答. Data table with 4 rows and 4 columns follows.

会ったことのない人とネットでやりとりした経験
一度はある 少しはある 何度もある
小4~6 10.2 8.3 10
中学生 15.5 15 13.8
高校生 14.3 23.2 17.5

子どもの会ったことのない人とネットでやりとりした経験: 保護者の回答

子どもの会ったことのない人とネットでやりとりした経験: 保護者の回答

Column chart. 保護者の回答. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

子どもの会ったことのない人とネットでやりとりした経験
一度はある 少しはある 何度もある 知らない
小4~6 5 9.6 3.2 1.4
中学生 6.3 14.7 4.2 6.3
高校生 6.1 14.9 6.6 12.6

 「会ったことのない人とネットでやりとりした経験」がある子どもは、小学生から高校生まで一定数みられます。 特に高校生では、「少しはある」23.2%、「何度もある」17.5%でした。また、子どもの回答と保護者の回答には大きな差があります。
 例えば高校生では、子どもの17.5%が「何度もある」と回答している一方、保護者が「何度もある」と把握している割合は6.6%でした。つまり、子どもがネット上で誰とつながっているのかを、保護者が十分に把握できていない可能性があります。
 知らない人とのネット上の交流が、必ず危険というわけではありません。
 しかし、性被害や犯罪などにつながる場合もあります。「知らない人とつながるな」と禁止するだけでなく、困ったことがあればすぐに相談できる親子関係をつくることが大切です。

(8)ネットで知り合った人と実際に会う子どもたち

ネットで知り合った人と実際に会った経験: 子どもの回答

ネットで知り合った人と実際に会った経験: 子どもの回答

Column chart. 子どもの回答. Data table with 4 rows and 4 columns follows.

ネットで知り合った人と実際に会った経験
一度はある 少しはある 何度もある
小4~6 1.7 0.8 0.8
中学生 2.9 1.4 1.1
高校生 4.5 4.9 2.5

子どものネットで知り合った人と実際に会った経験: 保護者の回答

子どものネットで知り合った人と実際に会った経験: 保護者の回答

Column chart. 保護者の回答. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

子どものネットで知り合った人と実際に会った経験
一度はある 少しはある 何度もある 知らない
小4~6 0.1 0 0 0.3
中学生 0.9 0.3 0.2 2.2
高校生 2.6 1.4 0.6 6

 ネットで知り合った人と実際に会った経験のある子どもが、小学生から高校生まで一定数います。特に高校生では、「一度はある」4.5%、「少しはある」4.9%、「何度もある」2.5%でした。一方、保護者の回答では、子どものこうした経験を「知らない」割合が、高校生で6.0%みられました。子どものネット上の交友関係を、保護者が十分に把握できていない可能性があります。

 ネットでは、相手の年齢や性別、名前などが本当とは限りません。ネットで知り合った人と安易に会わないこと、会おうと誘われたときには保護者や先生など信頼できる大人に相談することが、子どもを犯罪や性被害から守るために重要です。

 ここまで、小・中・高校生のネット依存が、生活習慣や睡眠、学習、人間関係など、さまざまな面に影響を及ぼしていることを見てきました。
 では、こうした状況を改善するために、私たちに何ができるのでしょうか。

 その一つが、家庭でのネット利用のルールづくりです。
 大切なのは、単に利用時間を制限することではありません。子ども自身がネットとの上手な付き合い方を考え、家族で話し合いながら、納得できるルールをつくっていくことです。

3. 有効なネット利用のルール

(1)「守らせるルール」から「自分たちでつくるルール」へ

ネット・ゲームのルールを破ったことが何度もある

ネット・ゲームのルールを破ったことが何度もある

Column chart. Source: 兵庫県文部科学省委託事業(2018)対象者4,000人. Data table with 4 rows and 5 columns follows.

ネット・ゲームのルールを破ったことが何度もある
保護者 学校 友達 自分
小4~6 11.6 3.8 1.8 6
中学生 15.2 7.4 1.5 7.2
高校生 15.2 7.4 5.8 12.5

Source: 兵庫県文部科学省委託事業(2018)対象者4,000人

「守らせるルール」から「自分たちでつくるルール」へ

2018年の調査では、ネット・ゲームのルールを「何度も破ったことがある」割合は、保護者が決めたルールや自分で決めたルールに比べ、学校や友達とのルールで低い傾向がみられました。

ここで重要なのは、学校が一方的にルールを決めて子どもに守らせることではありません。生徒会・児童会や学級活動などを通して、子どもたち自身が話し合い、納得してルールづくりに参加することが大切です。

自分たちでつくったルールは、友達同士でも共有しやすく、「先生に言われたから守る」から「自分たちで決めたから守る」へと変わっていきます。ネット・ゲームのルールづくりでは、禁止や管理だけでなく、子どもの主体性を生かしたルールづくりを進めることが重要です。

(2)ネット依存傾向があっても、学校・友達とのルールは守ろうとする

決めたルールを破ったことが何度もある

決めたルールを破ったことが何度もある

Column chart. Source: 兵庫県文部科学省委託事業(2018)対象者4,000人. Data table with 3 rows and 5 columns follows.

決めたルールを破ったことが何度もある
保護者 学校 友達 自分
依存傾向あり 48.4 20.4 14.9 42
依存傾向なし 19.6 10.2 3.8 12.4

Source: 兵庫県文部科学省委託事業(2018)対象者4,000人

 調査では、ネット依存傾向のある子どもほど、決めたルールを何度も破る割合が高くなっています。特に、保護者とのルールでは48.4%、自分で決めたルールでは42.0%でした。一方、ネット依存傾向のある子どもでも、学校のルールは20.4%、友達とのルールは14.9%と低く、学校や友達とのルールは比較的守ろうとする傾向がみられます。

 ここに、ネット依存を予防する大きなヒントがあります。先生が一方的にルールを決めるのではなく、生徒会・児童会などで子どもたち自身が話し合い、友達と共有できるルールをつくることが重要です。「守らされるルール」ではなく、「自分たちで考え、みんなで守るルール」へ。 子どもの主体性と仲間の力を生かした取組が求められます。

 ここにネット問題への対応のヒントがあると思います。さて、日本のネット依存について、まとめてみましたが、海外の状況はどうでしょうか?

4. 各国のSNS制限政策

(1)世界で進む「子どものSNS利用」の年齢制限

 子どもをSNSのトラブルや依存などから守るため、世界ではSNS利用に年齢制限を設ける動きが広がっています。

 オーストラリアでは、2025年12月から、Instagram、TikTok、X、YouTubeなどについて、16歳未満がアカウントを持つことを防ぐ責任をSNS事業者側に課しています。 EUでも、欧州議会が16歳を原則的なデジタル最低年齢とし、13~15歳は保護者の同意を求める構想を提案しています。
 こうした動きのポイントは、子どもや保護者だけに責任を求めるのではなく、SNSを提供するプラットフォームにも子どもを守る責任を求め、社会全体で安全なネット環境をつくろうとしていることです。

国・地域年齢の目安2026年8月現在の状況
オーストラリア16歳未満2025年12月から施行。対象SNSは16歳未満のアカウント保有を防ぐ義務。
イギリス16歳未満政府が禁止方針をけってお。2027年から導入を見込む。
ノルウェー16歳になる年政府が法案提出を進め、企業側に年齢確認を求める方針。
スペイン16歳未満政府がデジタルプラットフォームのアクセス禁止方針を表明。
フランス15歳未満を検討15歳未満禁止案は憲法評議会が2026年8月に違憲判断別の子供保護策は成立。
デンマーク15歳未満原則15歳未満を制限する方向。一定の場合は13歳以上を保護者同意で認める構想。
ギリシャ15歳未満2027年からの規制を検討。
トルコ15歳未満規制法制化の動き。
EU16歳が有力欧州議会が「デジタル成人年齢16歳」を提唱。13~15歳は保護者同意という構想。

(2) 世界のSNS政策は「社会全体で守る」方向へ

 世界のSNS政策は、年齢制限だけで子どもを守るのではなく、企業にも責任を求め、安全な仕組みをつくり、教育・支援を充実させる方向へ進んでいます。目指すのは、子どもが安全に、主体的にインターネットを利用できる環境を、社会全体でつくることです。

(3)なぜSNSの規制が広がっているのか 

 問題は、子どもの利用時間の長さだけではありません。
 無限スクロールやおすすめ機能など、長時間利用を促す仕組みに加え、ネットいじめ、性被害、自傷・有害情報など、さまざまなリスクがあります。
 さらに、睡眠や学習、リアルな人間関係への影響も懸念されています。そのため世界では、「子どもの自己責任」だけにせず、子どもを引きつけ続けるSNSの仕組みや環境そのものを、安全に設計する必要があるという考え方が広がっています。

(4)SNS規制には難しい課題もある

 子どもを守るためのSNS年齢制限には、課題もあります。
 SNSは、友達とのつながりや情報収集、悩みを相談できる居場所にもなっています。また、厳格な年齢確認にはプライバシーの問題があり、年齢詐称やVPNなどによる規制回避も考えられます。大切なのは、「禁止か自由か」ではなく、子どもを守りながら、デジタル社会を生きる力を育てることです。

(5)子どもの被害が起きてからでは遅い

 日本の法律の遅れを危惧しています。過去にも、体罰禁止が遅れてたことがありました。
 日本では、スウェーデンが1979年に体罰を全面禁止してから約40年後の2020年、ようやく親権者等による体罰禁止が法律に明記されました。2018年、2019年に深刻な児童虐待死が相次いだことを受け、政府は対策を強化し、2019年の法改正、2020年の施行へと進みました。

 この経験から考えなければならないのが、子どものSNS問題です。
 ネットいじめ、性被害、依存的利用、有害情報など、子どもを取り巻くリスクはすでに存在しています。体罰禁止と同じように、重大な被害が起きてから法律を整備するのでは遅い。海外の取組も検証しながら、年齢制限、企業責任、安全設計、教育・支援を組み合わせ、子どもを守る仕組みを早期に検討していく必要があります。

国全面禁止
スウェーデン1973年(世界初)
フィンランド1983年
ノルウェー1987年
オーストラリア1989年
デンマーク1999年
ドイツ2000年
日本2020年(世界59番目)

2018年 東京都で5歳の船戸結愛(ゆあ)さん
2019年 千葉県で小学4年生だった栗原心愛(みあ)さん
父親からの暴力を繰り返し受けた末に亡くなった。

2019年児童虐待防止法 児童福祉法が改正
2020年親権者などによる体罰禁止を施行

5. SNS時代に必要な「良心主義」

 SNS時代をどう生きるか?

 SNSでは、フィルターバブルによって自分の好みに合う情報が集まり、エコーチェンバーによって似た意見が繰り返されることで、「自分たちが正しい」という考えが強まりやすくなります。その結果、異なる意見を持つ人との分断や対立につながることがあります。

 そこで私たちが大切にしたいのが、「良心主義」という考え方です。人は誰も、自分なりの「良心」に基づいて考え、行動しています。しかし、それぞれが「自分は正しい」と信じるほど、異なる価値観を持つ人との対立が深まることがあります。

 戦争のような国家・民族間の対立から、学校でのいじめやSNS上の対立まで、その背景には、自分たちの考えや行動を「正しい」と捉え、相手の立場や価値観を理解できなくなる構造がみられることがあります。良心主義が大切にするのは、単純に「善か悪か」「どちらが正しいか」と決めつける前に、「なぜ、この人はそう考えるのだろう」と相手の良心や背景を理解しようとする姿勢です。自分と異なる意見にも耳を傾け、対話を通して相手を理解する。そして、自分自身の良心も問い直し、より広い視点から共通善を考えていく。

 一般社団法人ピアサポート研究会は、この「良心主義」の考え方を大切にし、子どもたちが異なる考えや価値観を認め合い、対話を通して共に生きる力を育む教育を目指します。これが、SNSによる分断や対立を乗り越えるための「良心主義」の出発点です。

引用文献

  • Young, K. S.(1998)“Internet Addiction: The Emergence of a New Clinical Disorder.” CyberPsychology & Behavior, 1(3), 237–244.
  • 内閣府(2017)低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査
  • 厚生労働省研究班(2018)中高生のインターネット依存に関する全国調査
  • 厚生労働省(2019)児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律、関連資料
  • 内閣府(2020)低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査
  • 厚生労働省(2020)体罰等によらない子育てのために
  • 兵庫県(2022~2025)青少年のインターネット利用に関する調査(文部科学省委託事業)
  • こども家庭庁(2024)低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査
  • Australian Government(2024)Online Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Act 2024.
  • Australian eSafety Commissioner(2025)Social Media Age Restrictions.
  • European Parliament(2025)Protection of Minors Online.