自殺

1 増え続ける子どもの自殺 「538人」 警察庁(2025)

 警察庁の統計によると、2025年に自殺した小・中・高校生は538人でした。内訳は、小学生10人、中学生172人、高校生356人です。2006年の315人から、約20年間で約1.7倍に増加しています。特に2020年以降は500人前後という高い水準が続いており、深刻な状況です。

 「538人」という数字の向こうに、一人ひとりの子どもがいます。統計では「538人」という一つの数字で示されます。しかし、その一人ひとりに、それぞれの生活があり、家族があり、学校生活がありました。そして、子どもが深刻な状況に追い込まれる前に、周囲の大人や友人が小さな変化に気づき、相談や支援につなげられる環境をつくる必要があります。

小中高生の自殺者数の推移: (警察庁,2026)

小中高生の自殺者数の推移: (警察庁,2026)

Line chart. (警察庁,2026). Data table with 5 rows and 21 columns follows.

小中高生の自殺者数の推移
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025
小学校 14 8 9 1 7 13 8 8 18 6 12 11 7 8 14 11 17 13 15 10
中学校 81 51 74 79 76 71 78 98 99 102 93 108 124 112 146 148 143 153 163 172
高校 220 215 225 226 204 269 250 214 213 241 215 238 238 279 339 314 354 347 351 356
合計 315 274 308 306 287 353 336 320 330 349 320 357 369 399 499 473 514 513 529 538

2. 学校から報告された児童生徒の自殺も高い水準に 「413人」文部科学省(2024)

 文部科学省の調査によると、2024年度に学校から報告のあった児童生徒の自殺者数は413人でした。内訳は、小学校7人、中学校112人、高等学校294人です。2006年度の171人と比較すると、約2.4倍に増加しています。特に2018年度以降、増加が目立ち、2020年度以降は400人前後の高い水準が続いています。

 なお、この数字は警察庁の自殺統計とは集計方法が異なり、学校から文部科学省に報告された人数です。子どもの自殺の実態を見る際には、両統計の違いを理解しておく必要があります。私は、文部科学省と警察庁の自殺者数の違いに大きな危惧をしています。

小学校から報告があった児童生徒の自殺者数: (文部科学省,2026)

小学校から報告があった児童生徒の自殺者数: (文部科学省,2026)

Line chart. (文部科学省,2026). Data table with 5 rows and 20 columns follows.

小学校から報告があった児童生徒の自殺者数
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
小学校 2 3 1 0 1 4 6 4 7 4 4 6 5 4 7 8 19 11 7
中学校 41 34 36 44 43 41 49 63 54 56 69 84 100 91 103 109 123 126 112
高校 128 122 100 121 112 157 140 173 171 155 172 160 227 222 305 251 269 260 294
合計 171 159 137 165 156 202 195 240 232 215 245 250 332 317 415 368 411 397 413

3.警察庁と文部科学省で自殺者数116人の差――子どもの自殺をどう把握するか

 2024年の児童生徒の自殺者数について、警察庁と文部科学省の統計には大きな差があります。

 警察庁の統計では合計529人、。一方、文部科学省が把握した自殺者数は合計413人でした。両者には、実に116人もの差があります。これは、警察庁と文部科学省では、統計の把握方法や対象が異なることが大きな理由です。

 しかし、この差を単なる「統計上の違い」で終わらせてよいのでしょうか。学校が自殺を把握できなければ、亡くなる前にどのような悩みやSOSがあったのか、学校の対応に改善すべき点はなかったのかを検証できない可能性があります。

 一人ひとりの死から学び、次の子どもの命を守るための検証につなげる仕組みが必要です。
 警察、文部科学省、学校、家庭、関係機関が情報を適切に共有し、可能な限り実態を把握するとともに、丁寧な背景調査と検証を自殺予防につなげていく仕組みが求められます。

2024年 警察庁・文部科学省の児童生徒に自殺者数報告の差
小学生中学生高校生全体
警察庁(2024)15人163人351人529人
文部科学省(2024)7人112人294人413人
差8人51人57人116人

4. 自殺は中学生から急増し、高校生で最も多い

 2024年度に学校から報告された児童生徒の自殺を学年別に見ると、中学生から増加し、高校生で特に多くなっています。一方、小学生は人数こそ少ないものの、小学4年生の女子2人の自殺が報告されています。まだ10歳前後の子どもが自ら命を絶つほど追い詰められていたとすれば、あまりにも悲しいことです。

 自殺予防は中高生になってから始めるのではなく、小学校段階から子どもの小さなSOSに気づき、早期に支援につなげる取組が必要です。
 また、思春期以降、とりわけ中学生・高校生への自殺予防と早期のSOSへの対応を一層充実させる必要があります。

2024年度 学年別・男女別 児童生徒の自殺の状況: (文部科学省,2026)

2024年度 学年別・男女別 児童生徒の自殺の状況: (文部科学省,2026)

Column chart. (文部科学省,2026). Data table with 4 rows and 14 columns follows.

2024年度 学年別・男女別 児童生徒の自殺の状況
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 高4
男子 0 0 0 0 1 4 13 9 26 36 48 53 3
女子 0 0 0 2 0 0 8 24 32 46 51 48 9
合計 0 0 0 2 1 4 21 33 58 82 99 101 12

5. 自殺した児童生徒の半数以上は、背景が「不明」56.7%(文部科学省,2024) 

 2024年度に学校から報告された自殺した児童生徒について、学校が把握していた「置かれていた状況」を見ると、最も多いのは「不明」234人(56.7%)で、半数を超えています。把握されていた状況では、2番目に多いには「精神障害」58人(14.0%)、3番目に多いには「家庭不和」46人(11.1%)となっています。なお、これらは「自殺の原因」を示したものではなく、学校等が把握した「自殺した児童生徒が置かれていた状況」(複数回答であり)です。

 ここで特に重要なのは、半数以上が「不明」であることです。
 子どもがなぜ死を選ぶほど追い詰められたのか、その背景を学校が十分に把握できていない現状がうかがえます。学校要因は、いじめは1.9%です。本当でしょうか?学校要因の低さが気になります。

2024年度 自殺した児童生徒が置かれていた状況(%)
(文部科学省,2026)
状況人数(人)構成比(%)主な状況
家庭不和4611.13番目に多い
父母などの叱責235.6
学業不振204.8
進路問題358.54番目に多い
教職員との関係での悩み(体罰・不適切指導を除く)20.5
教職員による体罰・不適切指導10.2
友人関係での悩み(いじめを除く)276.5
いじめの問題81.9
病弱等による悲観102.4
えん世266.3
恋愛関係での悩み215.1
精神障害58142番目に多い
不明23456.7最も多い
その他266.3

※複数回答可
これは「自殺原因」そのものでなく、学校が把握した「置かれた状況」である。

6.自殺の背景不明 小学生71.4%、中学生58.0%、高校生55.8%、詳細調査実施5.6%のみ

 文部科学省が学校から報告を受けた2024年度の児童生徒の自殺者413人について、亡くなる前に「置かれていた状況」を見ると、最も多いのは「不明」234人(56.7%)でした。小学生71.4%、中学生58.0%、高校生55.8%です。つまり、自殺した児童生徒の半数以上について、学校等が自殺に関係する可能性のある状況を十分に把握できていなかったことになります。

 だからこそ、子どもの自殺が起きたときには、単に「原因不明」で終わらせるのではなく、詳細調査が必要です。2024年度の413件について、基本調査は全件行われましたが、外部専門家などを加える詳細調査を実施したのは23件(5.6%)でした。また、詳細調査の制度や希望について遺族に説明したのは300件(72.6%)です。
 子どもの自殺から何を学び、次の命をどう守るのかという観点からも、背景調査のあり方が問われています。

2024年度 校種別 自殺した児童生徒が置かれていた状況
(文部科学省,2026)
状況小学生中学生高校生全体
人数%人数%人数%人数%
家庭不和114.31614.3299.94611.1
父母等の叱責0087.1155.1235.6
学業等不振00119.893.1204.8
進路問題001715.2186.1358.5
教職員との関係での悩み(体罰・不適切指導を除く)0010.910.320.5
教職員による体罰・不適切指導000010.310.2
友人関係での悩み(いじめを除く)00108.9175.8276.5
いじめの問題0043.641.481.9
病弱等による悲観114.332.762102.4
えん世0076.3196.5266.3
恋愛関係での悩み0021.8196.5215.1
精神障害00108.94816.35814.0
不明571.46558.016455.823456.7
その他114.387.1175.8266.3

※複数回答可
これは「自殺の原因」そのものではなく、自殺の理由に関係なく学校等が把握した「置かれていた状況」です。

7. 自殺未遂を経験した若者が語るその原因 「学校問題」男性49%、女性45%

 子ども・若者の自殺について、二つの調査を比べると、非常に重要な違いが見えてきます。

 文部科学省の2024年度調査では、自殺した児童生徒413人について、学校等が把握した「置かれていた状況」は、「不明」が234人(56.7%)と半数を超えています。一方、「いじめの問題」は8人(1.9%)でした。文部科学省自身も、「不明」が最多だったと報告しています。

 ところが、日本財団が18~22歳を対象に行った調査では、自殺未遂経験者が挙げた理由として「学校問題」は男性49%、女性45%に上っています。さらに日本財団の分析では、学校問題の中でも「いじめ」が大きな割合を占めていることが示されています。

 もちろん、二つの調査は対象者、年代、質問方法、調査時期が異なるため、数字を直接比較して「矛盾」と断定することはできません。しかし、学校側から見ると「不明」が半数を超え、いじめは1.9%である一方、当事者側から見ると学校問題やいじめが大きく浮かび上がる。この認識の大きな隔たりは見過ごせません。

若年層の自殺未遂の原因: (日本財団,2019)

若年層の自殺未遂の原因: (日本財団,2019)

Column chart. (日本財団,2019). Data table with 3 rows and 8 columns follows.

若年層の自殺未遂の原因
学校問題 家庭問題 健康問題 男女問題 経済生活問題 勤務問題 その他
男性 49 29 26 17 14 13 6
女性 45 46 29 23 13 10 7

8. いじめ重大事態は10年間で大幅に増加

 文部科学省によると、いじめ重大事態の発生件数は、2013年度の179件から2024年度には1404件となり、約7.4倍に増加しています。特に増加しているのが、いじめによって長期間の欠席などを余儀なくされる「2号重大事態」です。2013年度の122件から、2024年度には896件となっています。

 一方、生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いがある「1号重大事態」も、75件から768件へ増加しています。重要なのは件数の増加だけを見るのではなく、重大事態に至った背景を丁寧に検証し、同じような事態を繰り返さないための予防と早期対応につなげることです。

いじめ重大事態の推移: (文部科学省,2026)

いじめ重大事態の推移: (文部科学省,2026)

Line chart. (文部科学省,2026). Data table with 4 rows and 13 columns follows.

いじめ重大事態の推移
2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
1号重大事態(生命・心身・財産) 75 92 130 161 190 266 298 238 350 445 648 768
2号重大事態(不登校) 122 385 219 281 330 420 513 345 428 616 864 896
発生件数(合計) 179 449 314 396 472 598 716 512 705 919 1,306 1,404

9. いじめ重大事態は小・中学校で大きく増加

 いじめ重大事態を校種別に見ると、2024年度は小学校586件、中学校543件、高校262件、特別支援学校13件で、合計1,404件となっています。
 2013年度と比べると、小学校は58件から586件へ約10倍、中学校は95件から543件へ約5.7倍に増加しています。特に近年は、小学校での増加が顕著です。大切なのは、重大事態に至った背景を一件一件検証し、いじめの早期発見・早期対応と再発防止につなげることです。

いじめ重大事態 校種別発生件数: (文部科学省,2026)

いじめ重大事態 校種別発生件数: (文部科学省,2026)

Line chart. (文部科学省,2026). Data table with 6 rows and 13 columns follows.

いじめ重大事態 校種別発生件数
2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2032 2024
小学校 58 117 113 119 143 185 258 196 314 388 548 586
中学校 95 281 150 186 223 287 329 228 276 373 491 543
高校 24 51 45 88 102 122 123 84 112 155 259 262
特別支援学校 2 0 6 3 4 4 6 4 3 3 8 13
合計 179 449 314 396 472 598 716 512 705 919 1,306 1,404

10. 10代から30代まで「自殺」が死因の第1位

 厚生労働省の2025年人口動態統計によると、10~14歳から35~39歳まで、すべての年齢階級で「自殺」が死因の第1位となっています。
 これから成長し、学び、働き、家庭や社会をつくっていく若い世代で、自殺が死因の第1位となっている――本当に悲しい社会の現実です。
 一人ひとりの背景には、それぞれ異なる苦しみや生きづらさがあります。自殺を本人だけの問題として捉えるのではなく、家庭、学校、地域、そして社会全体の問題として考える必要があります。

 子どもや若者が発する小さなSOSに気づき、孤立させず、安心して「助けて」と言える社会をつくること。それが、私たち大人に求められています。

2025年度 人口動態統計月報年計の概況(厚生労働省)
10代から30代までの死因上位3項目
年齢第1位第2位第3位
10~14歳自殺悪性新生物不慮の事故
15~19歳自殺不慮の事故悪性新生物
20~24歳自殺不慮の事故悪性新生物
25~29歳自殺不慮の事故悪性新生物
30~34歳自殺悪性新生物心疾患
35~39歳自殺悪性新生物心疾患

11. 一般社団法人ピアサポート研究会からのメッセージ

 子どもや若者の自殺が後を絶たず、10代から30代まで自殺が死因の第1位となっている現状は、本当に悲しい社会の現実です。人は、一人では生きていけません。家族、友だち、先生、地域の人たちとの「つながり」の中で、支えられながら生きています。

 ピアサポートは、まさに人と人との「つながり」をつくる活動です。
 身近な仲間だからこそ気づける小さな変化があり、仲間だからこそ届く言葉があります。

「ひとりで抱え込まなくていい。あなたは、誰かとつながっている。」

 一般社団法人ピアサポート研究会は、子どもたちが互いにつながり、支え合い、安心してSOSを出せる学校・地域・社会づくりを進めていきます。つながりが、子どもの命を守る。私たちは、そのような社会を目指します。

参考・引用文献

・警察庁(2026)『令和7年中における自殺の状況』
・文部科学省(2026)『令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』
・日本財団(2019)『第3回自殺意識調査』
・厚生労働省(2026)『令和7年(2025)人口動態統計月報年計(概数)の概況』